クリア   まちづくり人
バー
クリア  なび1 なび2 なび3 なび4 なび5 なび6 なび7 なび8 なび9 なび10 なび11

  現場から生まれる発想を大切に誠意と情熱で個性あるまちづくり
寝屋川市まち政策部長 芝内 秀夫氏
 
 このコーナーでは、さまざまな立場でまちづくりに携わる人々を訪ね、仕事に対する想いや横顔をご紹介します。今回は、都市整備と密集市街地整備の両面でまちづくりに携わってこられた寝屋川市まち政策部の芝内秀夫部長を訪ねました。
 
芝内 秀夫氏
芝内 秀夫
(しばうち ひでお)
プロフィール
 昭和19年1月8日、大阪府生まれ。昭和43年に寝屋川市に入り、土木部都市計画課を皮切りに、都市開発、都市整備、土木関連部署を歴任。昨年4月から現職に。オフの日もまちづくりの勉強会に参加されるほどだが、月に2回、奥さまと出かける映画鑑賞だけは、ここ数年欠かされたことがない。

意気に感じて、志望外の「開発」に
 大学を卒業して都市計画課に入ったのは高度成長期で、京阪寝屋川市駅前の再開発の構想が動きはじめたころでした。役所に入って1週間も経たないある日「駅前の仕事は君にやってもらうよ」と、課長に言われたのです。
 大阪市出身の私が寝屋川市役所を志したのは、大学時代の土木工学の恩師から「土木をやるなら、これから再開発が本格化する寝屋川がいいぞ」と勧められたからです。恩師が寝屋川市民だというのもあったのかもしれませんが(笑)、私自身も「遊ぶのは学生の今のうち、しかし、就職したら、男として仕事に賭ける」という想いがあり、寝屋川で都市計画をやろうと考えたわけです。ですから、駅前の件を聞いたときには、花形の仕事ができると喜びました。ところが後に、私の仕事ぶりを買ってくれた開発指導担当の係長が「芝内君が絶対に必要だ」と喧嘩腰で課長とやりあっていた姿を見て、私は意気に感じ「それなら開発をやろう」と腹を決めたのです。

まちづくりは真剣同士の ぶつかり合い
 当時は、法制度も未整備な中において、開発がどんどん進んで人口が増え、私が寝屋川市に入った昭和43年には既に16万人に達し、駅周辺地域は多くの木造賃貸住宅が建て詰まっておりました。入ったばかりの素人の私でも、これは将来大きな問題になると分かっていましたが、開発業者は、建てればすぐに売れるものだから早く開発を許可してほしいと、いつも急がされていました。「このままではダメだ。何か対策を考えねば」と先ず、道路、下水道などの公共施設の完了検査を厳しくしなければと思い、時には懐中電灯を持ってマンホールに潜ってジョイントのズレを指摘し、工事をやり直させたりしていました。しかし、これでは根本的な解決にはならないと考え、係長を中心にその対策について、よく議論していました。

  現場の問題は、現場に解決のヒントが
 一心不乱に仕事に取り組んでいたころ、通勤電車のなかで新聞を広げていたら、ある記事が目にとまりました。関西のある市が、独自に開発指導要綱を定めたというものです。「これだ」と思いました。自分の仕事をシステム化して、マニュアルにしてしまえばいいんですね。それから、寝屋川市の実情に合った要綱はどんなものかを考え始めたわけです。
 業者との協議の中や完了検査に行ったときに、要綱のヒントが見つかります。たとえば、法律上では道路幅員が4mでいいところを5mにするにはどうすれば良いか。また、木造賃貸住宅などの高密度住宅から良質の低密度住宅へ誘導するにはどうすればよいか。開発業者がそれに協力して頂く為の説得方法(アメとムチの関係)はどうすれば良いのかを考えるために、そのたびに、メモとっていました。1日にメモカードを20〜30枚くらい書きました。このメモがベースになって、昭和46年に寝屋川市開発指導要綱の案が生まれたのです。しかし、当時は開発負担金を取ることは考えにくい事でしたので、先ず上司の説得、庁内調整、そして議会対策などで時間を要し、結局、開発指導要綱の施行は昭和48年になりました。
 開発に限らず都市計画を行う上での問題は、必ず現場で起きます。それを解決するには、法律の条文だけでは限界がある。ならばどこで解決の糸口が見つかるかといえば、やはり現場。議場で議員さんに訴えるのも、現場で自分が見たり聞いたり調べたりした事実の力です。「現場発想を大事にせよ」これが、仕事を進める上での最大のセオリーだと思います。

話のベクトルは相手の望む方向に
 木造賃貸住宅に代表される密集市街地の問題がクローズアップされ始めたのは、昭和52〜53年ごろでした。都市計画係長であった私が次に取り組んだのが、このテーマです。市民の皆さんにとって生活の基本条件が生命の安全です。消防車も入れないエリアをどうするか。入居者が減る一方の文化住宅をどうするのか。多くの現場を歩いた末に、家主さんの考えを知ることが先決だと実施したのがアンケート調査です。
 およそ1,000通の回答から見えてきたのは、市外に住み老齢化して後継者もおらず、管理が大きな負担になっている家主さんの姿でした。「まもなく、売却と建て替えのブームがくる」これが私たちの得た結論。そのときが、再開発のチャンスです。その後も幾多の困難がありましたが、これも現場発想が功を奏した一例です。
 まちづくりに共通しているのは、その現場ごとの分析の大切さ。そして、相手の気持ちを理解することの重要性です。人にはそれぞれ感情があり、その土地についての想いも様々です。こうした要素が複雑に絡み合った街のまちづくりは、一本のモノサシでシロクロを判断できるものではありません。熱意と誠意をもって、謙虚に相手の話に耳を傾ける姿勢。柔道では相手の力を利用する技が多いのですが、まちづくりも相手を知り、相手の望む方向に話を進めながら、やるべきまちづくりを行うことが大切なのではないかと思っています。
  ●取材を終えて
 1時間の予定を40分も延長し、情熱的に語ってくださった芝内部長。取材後、奥さまや娘さんとの会話を大切にしていると話されたあとに、市民の考えを知るためと付け加えられましたが、これはきっと照れ隠しです。ご家庭では良き夫、良き父に違いありません。そうでしょう、芝内部長。
 
| index| 特 集1| 特 集2| まちづくり人| 夢をかたちにまちづくり| みんなの広場|
|都市のアメニティ| パーキング| 賛助会員| 情報BOX| 魅力ある施設|


INDEXにもどる   homeにもどる