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  規制緩和は何をめざすか?
大阪大学教授 鳴海邦碩
 
ウランバートル(モンゴル)移動の民が定住しだした
ウランバートル(モンゴル)移動の民が定住しだした
 
ウランバートル(モンゴル)道路に進出してきた露店 ウランバートル(モンゴル)道路に進出してきた露店
ここ2、3年、モンゴル、ベトナム、中国とそれぞれ複数回行っている。いずれも社会主義国であるが、経済の開放化、つまり自由主義経済化が進んでいる国である。現在、日本では都市再生がらみで規制緩和が進行しつつあり、都市計画とりわけ土地利用規制の無用論もいわれている。これに対して、反論は少し声が小さいのが気になる。
 ベトナムでドイモイ政策がとられたのは1986年のことであり、それ以降、変化はさまざまな分野で進行している。なかでも注目したいのは不動産を巡る 状況である。顕著な現象の一つは公的住宅の払い下げ であり、多くが私有化されつつある。また、土地は基本的にはまだ国有だが、利用権の売買が自由に行われるようになり、戸建て住宅の建設ラッシュが進行し、市街地のスプロールが著しい。

 同じような現象は中国やモンゴルでも進行している。中国では、かっては公共住宅化していた昔からの お屋敷も払い下げられ、複数世帯が所有し居住しているものが増えつつある。

 変化は事業にも現れており、商業をはじめとして、個人事業者が急速に増加している。そうした事業所は、買い取った住宅に入る場合が多いようで、集合住宅の1階部分は軒並み商店などに利用転換されているし、オープンスペースには露店や自前キオスクがそこら中に発生している。


  こうした活性化状況は、まさしく規制緩和下の日本の都市で期待されていることかもしれない。
 ベトナムやモンゴルにおけるスプロールの実態を調査してわかったことだが、社会主義国には土地利用規制がそもそも存在していなかったことだ。なぜそうかというと非常に解りやすい。つまり、自由に土地を利用することがあり得なかったから、「土地利用規制」など存在しないのである。社会主義体制下の

都市計画とは、政府が決めた事業を実施することなのだ。つまり、基本的に社会主義下における計画とは、「賢者の計画」である。
 そうした開放経済下の国々で、基本的に土地利用規制が必要だという認識が次第に強まりつつある。なぜならば、規制、つまり方針のない開発が混乱した環境を生み出しつつあるからだ。こうした環境は将来、負の資産になる可能性が高いのである。


 一方、自由経済の大御所アメリカにおいても、将来のためには適切な規制に基づいた「賢い開発」が必要であるという認識が広まっ

ている。また、規制緩和がもたらす制限のない大型開発が、必ずしも都市の魅力の形成に貢献しないという現実も生じており、これに対して、既存のストックを生かす、小さな、木目細かな部分での規制緩和が有効であることがわかってきた。

 日本で今盛んに喧伝されている規制緩和は、このようなアメリカの状況を知らぬかのようである。都市計画は「賢者の計画」である必要は必ずしもないかもしれないが、規制緩和は「賢い規制緩和」でなければならない。

  ハノイ(ベトナム)小学校敷地の外壁を利用した露店     ハノイ(ベトナム)自力建設が生み出した町並み  
  ハノイ(ベトナム)小学校敷地の外壁を利用した露店     ハノイ(ベトナム)自力建設が生み出した町並み  

 

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