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規制緩和は何をめざすか? 大阪大学教授 鳴海邦碩 |
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ベトナムでドイモイ政策がとられたのは1986年のことであり、それ以降、変化はさまざまな分野で進行している。なかでも注目したいのは不動産を巡る 状況である。顕著な現象の一つは公的住宅の払い下げ であり、多くが私有化されつつある。また、土地は基本的にはまだ国有だが、利用権の売買が自由に行われるようになり、戸建て住宅の建設ラッシュが進行し、市街地のスプロールが著しい。 同じような現象は中国やモンゴルでも進行している。中国では、かっては公共住宅化していた昔からの お屋敷も払い下げられ、複数世帯が所有し居住しているものが増えつつある。 変化は事業にも現れており、商業をはじめとして、個人事業者が急速に増加している。そうした事業所は、買い取った住宅に入る場合が多いようで、集合住宅の1階部分は軒並み商店などに利用転換されているし、オープンスペースには露店や自前キオスクがそこら中に発生している。
都市計画とは、政府が決めた事業を実施することなのだ。つまり、基本的に社会主義下における計画とは、「賢者の計画」である。
一方、自由経済の大御所アメリカにおいても、将来のためには適切な規制に基づいた「賢い開発」が必要であるという認識が広まっ ている。また、規制緩和がもたらす制限のない大型開発が、必ずしも都市の魅力の形成に貢献しないという現実も生じており、これに対して、既存のストックを生かす、小さな、木目細かな部分での規制緩和が有効であることがわかってきた。 日本で今盛んに喧伝されている規制緩和は、このようなアメリカの状況を知らぬかのようである。都市計画は「賢者の計画」である必要は必ずしもないかもしれないが、規制緩和は「賢い規制緩和」でなければならない。
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