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ええやん末広南

  末広南地区の整備を完了して 渡辺 敏幸 従前建物構造図
従前建物構造図

整備図
整備図






整備前現況写真1
整備前現況写真

整備前現況写真2
整備前現況写真






公園・緑地
整備後公園・緑地

コミュニティー道路
整備後コミュニティー道路

住宅外観
整備後住宅外観[ETERNO II]

住宅内[エントランス]
整備後住宅内[エントランス]

周辺1
整備後周辺

周辺2
整備後周辺

 
 門真市末広南地区は、平成2年10月に「まちびらき」をした朝日町地区「カルテェ・ダムール」に続く2地区目の面的整備事業であり、朝日町地区の経験・課題が事業に生かされた地区でもあります。  末広南地区は、平成元年度の大阪府の制度であるコンサルタント派遣が契機となり研究会が設立されました。当地区は昭和62年4月に完成した門真市都市計画事業古川橋特定土地区画整理事業地区に隣接した地区であり、また平成5年5月にオープンした門真市民文化会館「ルミエールホール」に接した地区でもあります。


地区再生の仕組みと特長
合併施行
 門真市で1地区目に完成した朝日町地区は、土地の権利変換を交換分合にて行いました。権利者が負担する不動産取得税や交換、分合に要する時間は区画整理事業を導入することで解決する問題ではありますが、市が経験上考えている事と権利者の意向が一致する事はなかなか難しいことでした。末広南地区は、隣接地の区画整理事業の経験者が役員の中に数名おられ、役員会での市からの事業費提案もあったことから、役員会で区画整理事業導入の検討を始めようと言う事になりました。今でこそ既成市街地の区画整理事業は国も大阪府も推進していますが、当時は、既成市街地の区画整理事業は土地の増進率が少ない事もあり、認可の問題とか密集事業は同様の基盤整備手法であること、また国も都市局、住宅局と所管が分かれていること等でなかなか協議のテーブルに乗りませんでした。
 結果的には、密集住宅市街地整備促進事業と街区高度利用土地区画整理事業(現都市再生区画整理事業)の補助制度を導入する事で補助区分を明確にし全国初の同制度を使った合併施行の協議が整ったものです。


みんなで痛みを分け合う
 当地区の特長は、密集事業による権利者全員による更地までの自己負担をゼロにする方法です。痛みはみんなで分け合おうと言う事です。まず土地権利者(借地をさせている)は地代の凍結。建物所有者は当然建物の現在価値買収額相当分の補助金が権利者に入る訳ですが、その補助金は全て組合との委託契約(税理士は請負契約の方がいいと言っていた)に基づいて組合に全額納める方法です。組合は事前に役員の土地を担保に銀行融資を受け、借家人との退去交渉完了後退去補償金を支払う。権利者からの補助金が入った段階で銀行に返済し担保を抹消する。この仕組みを使う事により、本来は個々の権利者で借家人の退去費用と補助金の差が生じ、権利者間同士で金銭のやり取りをすると贈与税がかかるのをクリヤーしたものです。当地区の従前建築物は45棟171戸で内、老朽建築物は37棟159戸、老朽建築物の除却は平成6年度に32棟144戸を完了させ、平成7年度に残りを密集事業と区画整理事業で完了したものであります。補助金は、事業当初に退去補償費用を想定し、それに基づいて老朽建築物の補助(借家人の退去費用+除却費を建物の延べ床に置き換えた)をしましたが平成7年度に若干の上積み程度で大きな狂いは生じませんでした。


まちづくり事業協定
 これも地区の特長と言えるが市と任意の組合は「門真市末広南地区まちづくり事業協定」を組合設立後に締結し、事業を円滑に推進するための役割分担、費用分担を明確にして事業に取り組みました。
 何故、概ね1年で106世帯276名の借家人の退去が完了したかと言うのは、借家人の退去交渉等については事業協定の中で民々の契約解除とし、また各権利者は組合に委任し、組合の事務局が対応した事でこの様な短期間で借家人の生活再建が図られたものであります。市はその間公営住宅入居希望者に対して公営住宅の斡旋を行いました。斡旋した公営住宅(府、市営)数は14戸、公団1戸、養護老人ホーム1戸であります。


公共施設整備
 公共施設の整備は、除却完了の平成7年度より着手し、まず公共下水道管の布設・水路のボックス改修を行いました。計画道路は市道2路線の拡幅と地区を南北に縦断する新設道路の3路線であり、土地区画整理事業による路盤までの整備と密集事業の補助による仕様upであるブロック舗装を行いました。新設道路については、6mのコミュニティー道路を計画し、また、それに面する権利者については敷地内で1mの後退(権利者が整備し管理する)により市で整備する歩道と同様の歩道形態を確保することにより、8mのボンエルフ化を図った道路が完成しました。これは、それに接した権利者の理解と我々のまちは我々が良くするという熱意の賜物であると思います。
 地区内には、元々関西電力所有で市が無償貸借していた児童遊園(286.47m2)があり、この土地を換地し、それに土地区画整理事業により権利者が負担した3%の公園用地と一体的に整備を行ない、510.72m2の公園が誕生致しました。
 市は、権利者の熱意に負けないように、地区のコンセプト「大正ロマン」にふさわしい街灯等の整備を行いました。


建物計画
 平成9年3月に末広南地区建設委員会による末広南地区「景観デザイン・ルールブック」が作成され、総会で権利者各位に承認されました。
 「大正」の言葉は、現代人にとってはひとつのノスタルジーとなって心に響き、暖かい優しいイメージをもつものを現代の技術と感性をもって創出しようということで「大正ロマン」をコンセプトに掲げ、景観に対する考え方及びレベルの高い仕様にし、協調的な「大正」が持ち得た市民の底辺からわきあがるムーブメントを尊重し、建築物をみんなで作ろうと各材料等の詳細がこの時点で明確になったものです。建築物に対する補助金は権利者が負担する建設コストを抑えるのではなく、仕様をupすることにまちのグレードをより上げようという試みであり、これも権利者の理解と協力の賜物で実現したものです。
 この時点で問題となったのが、地区内で先行して建築する賃貸住宅等を経営していないAAAの権利者でありましたが、補助金を出してないが組合協議の下、最大限の努力をしていただきコンセプトに近づけた建築物が地区で最初に完成致しました。
 地区の建築物は2階までの壁面は大理石(ライムストーン)を使用することにより建物の高級感や風合いを醸しだす事に努められました。
 従後の建築物には大阪府の特賃制度と公庫の融資制度を活用し、また借家人の確保に特優賃制度を活用しました。しかし特優賃制度を活用することで周辺の賃貸住宅経営に及ぼす影響も考慮し、出来るだけ高い家賃を想定し、大阪府にも色々努力はして頂きましたが制度の主旨と上手く合致しなかったという反省点もあります。
 完成した地区の建物概要は、共同住宅9棟141戸(内店舗9戸、分譲1棟35戸を含む)、業務・共同住宅1棟3戸、店舗居宅2棟3戸、居宅1棟1戸、業務ビル1棟の14棟148戸です。建築の補助金を出したのが内8棟109戸です。


おわりに
 平成元年度にコンサルタント派遣を行い、その中で研究会が発足し、平成6年度に殆どの建物を除却しようと計画し、借家人の退去も概ね完了しました。平成7年1月に阪神・淡路大震災があり、末広南地区の補助対象物件である木賃が倒れたのではないかと気になり現地の確認を行って影響がなくてホッとした事が思い起こされます。丁度、密集事業の制度改編の時期でもあり、この末広南地区だけで大臣承認を取る予定で借家人の移転を進めていた時期であることから、空家化された住宅に子供が入っていたずらをし、万一火でも出したら危険だから何とか早く除却したいとの要望もありました。大臣承認予定だったので概ね1年と短期間で除却が完了し、事業推進上は良かったのではないだろうか。この種の事業はいくら市だけで頑張ってもできる事業ではなく、また権利者自らだけでも面的整備は不可能であり、市と協働し、各権利者のまちづくりに対する理解と協力があって初めて成しえるものであると考えられます。またその理解を深めるための努力を怠らなかった組合の事務局、各コンサルタントの方々のまちづくりに対する熱意と頑張りに感謝すると共にこの誌上をお借りして御礼を申し上げます。
(門真市 市街地整備課係長)




  末広南地区でのまちづくり
〜成立への要件と今後への課題〜 柳井 理廣


 この地区の老朽木造建物等密集地において地元権利者から整備意向がでてきたのは市民文化会館の着工を控えた昭和63年頃の事でありました。その後権利者有志の皆さんによる要望に基づいて平成元年度にコンサルタント派遣制度による「共同建替計画作成調査」を実施するにいたり、本格的な整備に向けての動きがはじまりました。  これより今日まで13年の歳月を費やし平成12年秋の「まちびらき」に至るまで地元権利者の皆さん、特にリーダーとして地元意見の調整と街づくり理念の啓蒙に尽くされた高橋理事長の御協力とご理解によりすばらしい街が誕生いたしました。  この整備事業の成立・完成のポイントとなった考え方等を簡単に整理してみました。

1. 地元権利者の熱意と危機感
 本事業が開始された平成元年頃を境に社会環境は大きく変動し始めていた。これまでの消費社会は大きく質と価値重視へと転化し始め、住宅環境においても質の向上とよりよい環境が大きな選択肢になってきました。このような状況は所有者の高齢化問題とあいまって潜在的な危機感が高まっていました。
 また、本事業参画の権利者の大部分は隣接する区画整理事業経験者のみなさんであり「都市整備」の重要性を経験的に理解された方々が殆どであったことから、街づくりへの熱意は並々ならぬものがあり、これが事業成立の大きな礎となりました。

2. 密集住宅市街地整備促進事業制度の存在
 本地区に摘要された上記制度は、このような権利者の熱意と意向に沿うべく官民の作業範囲を明確にしクリアランス事業としての主旨を十分に担う制度でありました。これにより権利者事業負担は軽減され事業推進の大きな力となりました。

3. 高度利用型土地区画整理事業との合併施行の実現
 密集住宅市街地整備促進事業制度の最大の欠点である権利(土地所有権等)の交換・分合筆に伴う煩雑で膨大な費用が発生する作業を高度利用型土地区画整理事業の導入により、公正で明快・明確な規制にしたがって、整然と実施できたことが大きな成立要件に挙げられます。また1haに満たない地域での土地区画整理事業においても事業補助採択が可能となったことも今回の事業の大きな成果であるといえます。

4. ルールブックの作成と合意
 本地区の中央を貫くコミュニティー道路は計画初期の権利者アンケートに基づいてコンサルタントから提案し、任意の壁面後退への合意のもと実現しました。この道路が本地区の象徴的な道路となっています。また、建物デザインにおいてもコンサルタントの協力を得て、権利者が色調・形態等について「ルールブック」を作成し統一した街並みが実現するに至り、このような「緩やかな連帯」が事業の推進に大きく寄与する事が実証されました。


今後への課題
 末広南地区の整備事業から今後の同種の事業への多くの教訓が見出されました。

1. 単独での総合事業制度の確立
 今回は2つの制度手法を合併施行することにより実現が可能となりましたが、その分権利者側での作業も多岐にわたってしまいました。今後は1事業制度による総合事業制度の確立が望まれるところです。

2. 事業としての街づくり
 街づくりには巨額の投資が必要となります。このような事業を「熱意と夢」だけで推進することは非常に困難です。補助金の増額も闇雲にできるものではなく、このようなことから市場原理の導入や費用便益性向の検討・DCF手法の導入などによる新たな不動産投資手法によるビジネスモデルの検討が急がれるところです。

3. 対象地域への広報やパブリックコメントの募集
 末広南地区は先般の土地区画整理事業経験者が多くおられたことが「街づくり」への理解を深めたと言って過言ではありません。このような「街づくり」・「都市計画」について対象地域への十分な広報活動をあらゆる手段を駆使して推進する必要性を痛感しました。
 また、一般的なパブリックコメントも継続的に募集していくことが、このような事業の改革につながるものと考ております。
(株式会社TAC設計事務所)




  門真市末広南地区事業計画
〜具体的な街づくりに向けて〜 小池 邦彦

 
街づくりの概念
 街全体で統一感のとれた魅力的な景観づくりを行うことにより地区を活性化させ、活気ある住みよい街をつくる事を目的としました。しかし、多くの方々のイメージ統一を図るのは容易なことではありません。そこで『景観デザイン・ルールブック』が作成されました。また、それを施行することで隣接周辺地域に良い影響を与え、尚一層広範囲な発展を望めるものとなります。

1. 街並みのイメージ
 同じ社会の一員として誰に対しても優しい目が向けられ、あらゆる場で革命の夢を育てていった。そんなハイカラで自由な時代が大正時代でした。はかない民主化の時代中で、人々は皆「夢」を語らい、政治、文化、農村、街はどうあるべきかを真剣に討論し合い、模索しながら形を作っていった。そうした底辺から起こる運動こそが大正モダンを生み出したのです。そういった形態ではなく、新しいものを取り入れる考え方「大正ロマン」をコンセプトの中心としました。

2. イメージからデザインへ
 そのような大正ロマンを街並みから感じさせることができるようにするための方法として、大正建築の一部のディテールを現在建築に融合させ、それを街並みの景観として取り入れていくこととしました。
 それは大正時代の建築のレプリカではなく、あくまでも現代建築に「大正ロマンの人々の夢を乗せていく」ことです。そして後々、それが「平成ロマン」として受けとめてもらえるようになるのです。


景観に対する考え方
1. 景観
 街全体の中で景色として見えてくるものは建物だけではありません。そこには当然、外構設備があり、建物と建物をつなぐ通路やゲート等が存在します。
 それら全てを制限していく事で、全体として美しく豊かな街に見えるようにしています。

2. 歩道
 生活している人々が通る路地、集う広場、また心を癒してくれる植え込みや街路などが必要です。
 それらの空間がいかに美しく、また楽しめるものであるか、そこで生活している人々にとっていかに馴染み深いものとなるかが、街路景観を考えていく上で重要なポイントとして計画しています。

3. 建築物
 個々の建物がたとえ美しい建物であっても相対的に見て違和感のあるものでは美しい街並みになりません。従って、個々の建物形状や素材を総合的に美しくコントロールすることによって、効果的な景観が出来上がるようにしています。

4. 外構設備
 日常生活の中で日々接している「ストリートファニチャー」は、街にふさわしい形で確実に計画する事で、より現実的に魅力が増すのです。また、サイン計画においては、街全体を理解してもらい、安全で円滑なタウン内導線を確保するために十分考慮して計画しています。
(有限会社コイケデザインコラボレーション代表)





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