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  このコーナーでは、さまざまな立場でまちづくりに携わる人々を訪ね、仕事に対する思いや横顔をご紹介します。今回は、今年6月に赴任されたばかりの住宅金融公庫大阪支店、井上順支店長にお話をうかがいました。

  思いやりの心を忘れず
自分の信念を一筋に貫く

住宅金融公庫 大阪支店長 井上 順氏
 
 

再開発の“武者修業”に建設省へ

井上氏
井上 順(いのうえじゅん)
プロフィール
昭和19年7月22日生まれ、佐賀県出身。
昭和43年4月住宅金融公庫入庫。人事課長、秘書室長、名古屋支店長、企画部長などを歴任、平成12年6月より現職。若手時代には2度建設省都市局に出向。趣味のゴルフはHC12。ドッグレッグでもショートカットでグリーンを狙う“逃げないプレー”が身上だ。
 私が住宅金融公庫に入庫したのは、昭和43年です。以前から、公庫では「土地の合理的利用と災害の防止に寄与する建築物」に対する融資は行っていたものの、その対象は不燃化促進のためのいわゆる“ゲタばきビル”が主でした。ところが、そのころから都市の再開発が本格化。融資対象も、公共団体が施行する都市再開発事業へと次第に移り始めました。
 こうした時期に、どういうわけか入庫4年目の私が選ばれ「建設省の都市局に出向し、都市再開発を勉強してくるように」との辞令を手にすることになったのです。
 公庫から都市局へ出向するのは、私が初めて。今にして思えば、かなり気負って行ったんですよ。入庫以来、債権回収と人事しか経験がなく、都市再開発については素人同然でしたけれどね(笑)。
 それだけに、仕事は私の好奇心を刺激してくれることばかりでした。土地と建物を権利変換して公開空地を作る手法なども、このとき初めて知ったんです。ずいぶん頭の良い方が考えられたのだなあと感心すると同時に、この方法にたどり着くまでの先輩の苦労もしのばれ、都市再開発という仕事の大変さと意義深さを感じました。




行政事件訴訟で被告席に…!?

 その5年後の昭和53年から3年間、再び建設省に出向し、街区整備による権利関係を調整する訟務に携わりました。当時は“区画整理違憲論”も喧伝された時代。地権者の方からすごい剣幕で怒鳴られることは珍しくなかったですし、裁判所に被告として出廷したこともあります。まさか被告席に座るとは思いませんでしたよ(笑)。
 不服審査申立の書面などを見ると、父祖伝来の土地を守ろうとする地権者の方の言い分は、よく分かります。しかしひるがえって、その事業で地域社会の得られるメリットを考えると、そちらのほうがはるかに大きい。実際、地権者の方も、事業完了後には「街がきれいになって良かった」と言ってくださることがほとんどなんですよ。まちづくりの第一線に立つ者として、確たる信念をもって事に当たる大切さを実感しました。
 いずれにしても、二度にわたる出向によって視野や知識を新しい方向に広げることができ、私にとっては、得がたい経験だったと思っています。




体当たりすれば、道は拓ける

 住宅金融公庫に奉職して今年で32年になります。この間心がけてきたのは「逃げの姿勢になるな」ということです。
 どんなに困難なことであっても、真正面から体当たりでぶつかれば、意外と簡単に道が拓ける場合があります。ところが、「いやだなあ」という気持ちが少しでもあると、うまくいきません。
 ただ忘れてはならないのは、相手の気持ちを考える努力。そして、自負心をもって事に臨む気持ちです。思いやりがなければ傲慢不遜になり、プライドを失えば卑屈未練になってしまいます。この2つは、いわば“車の両輪”。どちらが欠けてもだめですね。都市開発のように相手のある仕事では、この姿勢がとくに大切だと思います。
 住宅金融公庫では、今年度から「都市居住再生融資」をスタートしました。私も企画部長として創設に携わったのですが、この制度は複数の住民の方が協力して住宅や店舗を建て替える際に、通常の公庫融資と異なり店舗部分も対象に、最優遇金利で資金の80%まで融資しようというものです。こうした制度を通じて、私たちは今後も、都市居住の再生を側面からサポートしていきたいと考えています。



●取材を終えて
終始笑顔で、気さくにお話しくださった井上支店長。「思いやりと信念を持って」のお言葉に、住民の方々のことを本当によく考えておられる姿勢が感じられました。「活気があって庶民的」と評される大阪が、もっときれいで住みやすい町になるように、これからもよろしくお願い致します。

聞き手 藤近雅彦




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