都市のアメニティ
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  まちを華やかにするもの
大阪大学名誉教授 帝塚山大学教授 紙野桂人
リスボンのケーブルカー
リスボンのケーブルカー

パレルモの花市
パレルモ(シチリア島)の花市

シャンゼリゼのカフェテラス
シャンゼリゼのカフェテラス

 
世界都市と言われるほどの名声を持つ市には、
必ず自他ともに認める華やかな雰囲気を持った大通りやまち場があるものだ。パリ市のシャンゼリゼはその代表である。ニューヨーク市の五番街あるいはタイムズスクエアもそうである。ロンドンは比較的地味だが、それでもピカデリーやリージェント・ストリートがある。ベルリンはかつてウンター・デン・リンデンが名をあげたが、いまはクーダム(クーアフェルステンダム通り)が有名である。アジアの都市では、上海市のバンド(外灘)を筆頭にあげておきたい。
 さてシャンゼリゼの場合、その名声が確立されたのは十九世紀末のベルエポックと思われるが以来百年、この世紀末に至って市がそれを改善した。それは建物のクリーニングと自動車対策であった。建物の汚れを洗い落すと共に大通りの地下に駐車場を整備し路上に溢れていた駐車を一掃したのである。その結果、建物は表情を豊かにし、広い歩道はクリーンになって世界の人々が行き交う風格を取り戻した。
 この美しい大通りを歩いて思うのは、視線を横に向けて遊ばすことの出来るゆったりした歩道幅員と整ったニレの並木、通りの両側の建築群のほど良い高さと趣味の良いデザイン、通りに顔を出す店やカフェ、レストランなどのしゃれた店構えなどを総合した印象の格の高さがひとつ。それにもうひとつ、歩道に出たカフェテラスのパラソルなどの装いの美しさ楽しさである。そこに席を取る人々も自然と優雅になってくる。それを見て通るだけで心が華やぐ。新世紀に向けてこの街は世界の一級品としての力をとり戻したようだ。
 都市もまちも、華があって初めて人を魅惑する力を持つことが出来る。そのためにはまちに華やぎを演出する何かが必要である。古い落ち着いた姿のまちでもそれは必要である。まちが灰色に沈み込むと、住む人々の心も閉じてしまうように思う。それは都市を駄目にする。
 ところでヨーロッパの中世都市には必ずひとつは花の露店市がある。重苦しい石の壁に包まれたまちの雰囲気が、そこでぱっと明るく賑やかになる。それは都市に生きて来た人々の知恵で生まれた。まち場とはそういう物なのである。
 都市に動く交通機関にも、まちに華をそえる視覚的な働きかけがあると思う。人を運ぶ用に加えて、人々の眼を楽しませる形、色彩がものを言う。ロンドンの2階建てバスが鮮やかなレッドカラーで装われているのはその一例である。もしもあの車体が、彩度の低い中間色や灰色でアレンジされていたら、あの話題性を失っただろう。
 ポルトガルのリスボンのまちで、美しく透明感のある黄色に装われたケーブルカーに出会った。それはまちに華をもたらし、印象を豊かにする力を持っていると思った時、私は用事も無いのにチケットを買っていた。

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