特集1 府民等協働によるまちづくり

大阪府の市町村における
まちづくり活動の支援状況について

大阪府住宅まちづくり部市街地整備課

 大阪府の住宅まちづくり施策の基本方針となる「大阪府住宅まちづくりマスタープラン(平成19年3月策定)」では、府民等による自発的なまちづくり活動を後押しするため、「住民主体のまちづくりの仕組みや支援体制の整備」に取組むこととしています。
 現在、住宅まちづくり部市街地整備課では、大阪府(市街地整備課、総合計画課)、府内10市及び(財)大阪府都市整備推進センターで構成する「府民等との協働まちづくり推進会議」を立上げ、支援体制づくり等について検討をすすめていますが、これに先立ち、大阪市を除く府内の42市町村に対して、まちづくりの初動期段階における行政からまちづくり組織への支援についての現状や意向の調査を実施(平成18年10月)しましたので、その結果の概要を報告します。

結果概要

@支援の必要性と制度化の状況
画像 まちづくりの初動期活動に対して行政から支援することの必要性に対する問いに対しては、全体の85%を超える36自治体が必要性を感じています(図1)。
 一方で、何らかの支援制度を有する自治体は、全体の約1/4に当たる10市町村に止まっており、必要性と現実のギャップが生じています(図2)。
 支援内容の内訳を見てみると、大きくは活動費の助成とアドバイザーの派遣の2つとなっています(図3)。行政として必要と考える支援の内容は、均等に分散していますが、市民のまちづくり意識を高めるための「研修会・セミナー等の開催」や「アドバイザー派遣」などが比較的多くなっています。これは、まだ市民のまちづくり意識が高まりきっていないと各自治体が認識している裏返しとも受け取れます(図4)。

A今後の制度化に向けた意向
 支援制度を持たない32自治体の今後の制度化の検討予定については、制度化に向けて検討している自治体はなく、「検討の予定がない」と回答している自治体も12に上ります(図5)。その理由としては、「市内部で理解が得られない」が最も多く、ここでも理想と現実のギャップが現れています。
 また、12自治体が「大阪府が先導すれば検討」と回答するなど、大阪府の動きをきっかけにしたい意向も伺えます。


 今後、大阪府としては、これらの市町村の意見も踏まえつつ、前述の推進会議等を通じ、まちづくり関係各者による効果的で実効性のある推進体制と支援のあり方について検討を進めていくこととしておりますが、まちづくりの概念が非常に広範囲に及ぶ中、行政を補完し、また、市町村が支援体制を整えるまでの代替機能として、まちづくりを幅広くサポートできる公的な中間支援組織が必要になってきます。(財)大阪府都市整備推進センターは大阪府域において、このような役割を担うことができるものと考えています。



NPO法人によるまちづくり活動

NPO法人地域デザイン研究会 理事長  平峯 悠

 平成17年10月1日現在、民法に規定されている公益法人は社団・財団法人あわせて25,263法人を数え、それぞれの定款に基づき非営利公益事業が行われている。大阪府においては社団法人408、財団法人510合計918法人であり、当センターもその一つである。まちづくりの分野での法人数は定かではないが、設立目的から推測するとその10数%程度であり、これらが有効に機能し、多様化するまちづくりの課題に柔軟かつ機敏に対応し、市民・住民及びNPOとタイアップして活動できる自由度を持っていれば、行政と協働するまちづくり等という表題を掲げることもないはずである。ところがこれらの公益法人は認可・監督官庁により人事から業務内容に到るまで強力な指導が及ぶことから活動が制限されているのが現実であろう。
 一方、阪神淡路大震災のボランティア活動に後押しされ、いわゆるNPO法が制定されてから10年(1998年)になる。NPO法の主旨は市民による自由な活動を可能とするよう、主務官庁の許可主義ではなく所管庁による認証という形態をとり、指導の代わりに市民への情報公開によるガバナンスを志向しており、非営利で公益的な活動をする団体が、従来より簡便に自由に法人格を取得できるようななったことは事実である。しかし残念なことに法人格は取得できてもその維持管理・運営は極めて厳しい。事業に対する助成や補助の少なさ、委託という契約方式の矛盾などに加え、行政との協働とはいえ、川上からの流れは一向に変わらず、下請的で行政の仕組みに取り込まれる。
 これまでの公益法人やNPO法人等の問題点や課題をどのように解決していくかということに加え、日本各地での多くの自立した活動が顕著になっていることを改めて認識すべきである。バブル崩壊以降、人々の行動や意識に変化が生じてきているが、その要因としては、@行政に力がなくなってきた、A企業・民間も余裕を失ってきた、B自らのミッションと行うべきことを面白がって行動する市民や個人が増えてきた、C一般市民・住民も何らかの形で参加したいという欲求が生まれてきた、Dこれまでの制度仕組みに飽き飽きしてきた若い人達による新たな行動が起こってきたこと、E高齢化社会のなか有能で元気のあるシニア層が増えてきたこと、などがあげられる。
 大阪をはじめ日本の各地には、パワーと斬新なアイディアを持つ人達、使命感を持つカリスマや行動力に富んだ多くの若者がいる。現在の日本の直面する殺伐とした世相や教育の崩壊などに対し、この人達たちが結束し行動を起こせば日本のよき伝統や考え方を回復させ、凋落傾向にある現在の社会を豊かな社会に変えることが出来よう。その兆しは既に表れてきている。日本が戦後驚異的な復興を遂げることが出来たのはしっかりとした組織体制、それも行政いわゆる「お上」が先導・主導するに好都合な体制を造り上げたことによる。しかし新しい動きに対しては極めて反応が鈍く、既に疲弊していると多くの人達は感じている。
 NPO法人によるまちづくりと行政のあり方は、補助金や助成金という現実的な問題も解決しなければならないが、それ以上に社会の変化に対し理解した上で、行政、公益法人、NPO等相互の新しい役割分担や税金の配分ルールを築くことにある。行政との協働というのは、根底には現実の社会に対する確かな認識と新しい生活や暮らしのスタイルをどのように構築するかという哲学の上に成り立つものであると考える。


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