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『やらかい区画整理』の実施について

大阪府住宅まちづくり部市街地整備課



はじめに

 土地区画整理事業は、まちづくりを推進する代表的な手法として、戦前、戦後を通じ、様々な時代の要請に応じて活用されてきた。
 今後、府下においては、既成市街地の再整備や低未利用地の活用、密集市街地の解消などの都市課題に重点的に対応していく必要がある。
 しかしながら、こうした既成市街地での事業にあっては、これまで新市街地で行われてきた運用や手法のみでは、充分に対応できない様々な課題が考えられる。
 こうしたことから、既成市街地の再生に区画整理手法を一層活用するため、これまで個別に実施してきた様々な弾力的な運用事例や他事業との連携事例を収集し、適用の条件や留意事項等を整理したものを『やらかい区画整理』の実施について(大阪府の既成市街地における土地区画整理事業の推進のための工夫と留意事項(案))として取りまとめた。


既成市街地における区画整理手法の課題整理と対応方策の提案

T.設計基準

 土地区画整理事業の設計基準(技術的基準)は、法及び施行規則に定められているが、地区ごとに事業目的や背景などが異なり、画一的な運用が円滑な事業推進の阻害要因にもなりかねないと考えられる。
 このため、規則の「ただし書き」により運用を緩和する技術的助言として運用指針が示されているが、『やらかい区画整理』では、さらに設計基準の運用を明確にすべく、既成市街地で活用する上での課題整理を行うとともに、その対応方策として弾力的運用を提案し留意事項をまとめている。


施行地区

地区設定
 →敷地境界、中抜き地区、飛び施行地区の検討


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施行規模
 →実現可能性の考慮と小規模連鎖での実施


道路

幹線道路との交差・通過交通抑制
 →道路の段階構成を明確にした設計と安全対策

道路幅員
 →小幅員区画道路の計画基準(案)の適用
 →移転物件抑制や二次開発等を考慮した設計


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隅切り
 →道路利用状況や移転物件抑制を考慮した設置


公園

 →公開空地等の公園みなし
 →ただし書き適用による負担軽減
 [既存公園の誘致圏考慮による整備費縮減 高架下公園整備による公共減歩緩和など]


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排水施設

 →既存水路の道路内暗渠化による減歩緩和


環境保全

 →敷地緑化等で二次開発との適切な分担


画地・街区

 →集約換地や二次開発を考慮した規模の設定

U.換地計画

 換地計画に関する事項は法、施行令及び施行規則に、適正な運営の法的根拠が定められているが、現実の土地区画整理事業においては、 その実務のあり方は運用に任されているのが実態であり、地区により対応が異なることも考えられる。
 そこで『やらかい区画整理』では、運用指針に示される事項と既成市街地での土地区画整理事業での実際の対応についてあり方を検討し、次のような弾力的な運用を提案し留意事項をまとめている。


既成市街地における区画整理評価

実勢価格と区画整理評価との剥離
 →地区特有の要因を反映した新たな係数の導入

既成市街地特有の状況を考慮した路線価の設定
 →前面道路幅員や地区外施設の考慮

計画的に集約化する大規模画地の評価方針
 →従後の土地利用に着目した収益性の反映


既成市街地における換地計画

小規模な宅地に対する救済方策
 →集約共同化の促進や地区計画による制限緩和

土地利用の純化と照応の原則
 →申し出換地の積極的な導入


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私道の明確で効率的な取扱いルール
 →課税状況等を考慮した評価方法と換地不交付


他事業との連携可能性

 土地区画整理事業は、換地手法を用いて土地を入れ替え、集約・整形化することにより、既成市街地における防災性の向上や、高度利用を図ることによる街のにぎわい創出など、都市再生を進める手法として活用がされている。
 これらをより一層効果的に進めるためには、土地区画整理事業の柔軟性を活かした他事業との連携が有効であるため、これまでの連携手法の整理と今後期待される連携方策を提案している。


実施中の事業連携(手法と実施地区の例示)

市街地再開発事業

住宅市街地総合整備事業・住宅地区改良事業

優良建築物等整備事業
 →各種上物整備事業との連携

高規格堤防事業
 →公管金の適用範囲と費用負担の考え方提示


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街路事業(沿街・沿区)


今後期待される事業連携

地区計画と連携した地籍整備型区画整理事業
 →壁面後退による道路整備や地籍混乱解消


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公共施設管理者負担金を活用した連携
 →沿街・沿区手法の道路事業等への活用

道路整備と敷地整序型区画整理事業との連携
 →廃止可能な公共用地を活用した買収面積減少


公共施設予定地内への宅地換地・買収
 →公共施設整備計画に影響されないまちづくり


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その他

各種制度等のうち代表的なものを紹介している。


まちづくり交付金や各種融資制度

都市計画決定後も長期未着手の地区の取扱い


おわりに

 『やらかい区画整理』は、土地区画整理事業をまちづくり手法と捉えたときの、柔軟性や多様性について事例をあげて紹介し、これらを適用・導入する際の留意事項もあわせてまと めた。
 まちが抱える課題や目標は多種多様で、適用地域を絞って編纂しているが、これらの工夫や留意事項は、まちづくりへの熱い想いとそれを実現する強い意思と知恵により生み出され、こられから学ぶべきことは非常に多い。
 最後に、『やらかい区画整理』が今後のまちづくりを進める上での参考とされ、地区の課題解決を図り、地域がより一層活性化されることを期待する。


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