提言 これからの沿道まちづくり
第二京阪道路沿道まち・みちづくり PART2 
(財)大阪府都市整備推進センター理事長  藤田健二

都市整備事業部調査計画課主幹  金城昌幸

1.はじめに

 前回の特集(第6号,2003年3月,P7〜P8)では、大阪府域の中心部に向け槌音が間近に迫ってきている大阪都市圏の最重要路線・第二京阪道路の整備について、近畿地方整備局浪速国道工事事務所の取材をもとに、「みちづくり」の面から主に紹介しました。本号では予告のとおり、第二弾として、「これからの沿道まちづくり」の観点から、21世紀にふさわしい幹線道路と沿道のまちづくりの考え方やそのあり方について、以下に提言することとする。


2.沿道まちづくりの基本的考え方

 最近の社会経済情勢を鑑みるに、社会資本整備を取り巻く環境は厳しいものとなっており、また、まちづくりそのものも行政主導から住民主導へという流れになっている。
 そこで、民間活力を投入させるためにもコーディネーターを中心に官民がともにアイデア、工夫を持ち出し、幹線道路と沿道との一体的整備を、効率的かつ効果的に推進し、公害対策はもとより道路と沿道空間との新しい環境づくりを創出していくことが必要である。
 すなわち、第二の国道43号を創らないために、沿道部における環境対策や土地利用のあり方、土地利用や建築物等の規制誘導策について、道路サイド・都市サイドが個別に対応するのでなく、互いに緊密に連携することが必要である。
 幹線道路の沿道まちづくりを進めるにあたっては、幹線道路の大きなインパクトを良好なまちづくりに活かせるよう、住民・地権者、行政(都市計画担当や道路事業担当はもとより開発指導・建築指導や農政部局等横断的組織)、開発者等が適切な役割分担のもと、沿道地域の将来あるべき姿を定め、明確な目標をたて、@生活環境の改善や道路の利便性の享受、さらには、Aミニ開発や乱開発等によるスプロール化の防止など、計画的まちづくりの推進とともに、B緑・景観の保全等を適切に行うことが重要である。
 また、民有地側と道路側の境界部の空間を相互に共有空間として捉え、民地側は沿道の道路利用と将来まちづくりを考慮し、適切な道路構造への部分改変や土地利用形態を選択する。また、道路側も民地側の土地利用を配慮し、沿道環境と道路機能が最適になるよう機能や構造を調整、改変する『相互共有空間調整方式』ともいえる協議調整の場を設けることが必要である。

道路と沿道との断面空間構成の考え方

  次に、沿道まちづくり整備の基本的考え方としては、以下の通りである。
相応しい沿道環境に向けて、沿道部(特に官民境界部)での空間確保や緩衝建築物等の立地等、生活環境改善に資するような土地利用や空間構成を促進する。
防災課題の克服に努め、防災環境づくりを行う。
沿道地域に相応しい沿道環境・景観を誘導するための具体的な指導基準・技術基準を明確にし、建築指導、開発指導、さらに、景観条例・まちづくり条例等に基づく効果的な指導を実施する。
住民・地権者の主体な計画的まちづくりを促進するために、住民組織の設立やその活動に対する支援方策など、沿道まちづくりの推進体制の整備を図る。
まちづくりの具体化の熟度に応じて、段階的に土地利用調整が可能な方策について具体化を図る。
リーディングプロジェクトとなるモデル事業の推進により、住民への意識啓発と沿道全線にわたるまちづくりへのインパクトを高める。
 
土地利用別モデルとしての空間構成の概念
↑表-1をクリックで拡大します

3.第二京阪道路における沿道まちづくりの基本方針

 2.の沿道まちづくりの基本的考え方に基づく、第二京阪道路の計画的な沿道まちづくりの基本方針は、以下のとおりである。

第二京阪道路における沿道まちづくりの基本方針

土地利用別モデルとしての空間構成の例
↑図-2をクリックで拡大します

4.モデル事業の推進

 モデル地区において、道路と沿道の一体的まちづくりをリーディングプロジェクトとして示すことにより、他地区への波及効果を高めることが期待できる。
 すなわち、即地的・実践的検討を行うことにより、沿道まちづくりにおける問題点・課題やその対応策を明らかにでき、全線における共通要素と個別要素を抽出できる。
 以下は、モデル事業推進にあたって、その初動期の進め方についての具体例である。

参画・協働まちづくりの第一歩として

5.おわりに

 地域住民が愛着を持ち、誇れるまちを目指すには、幹線道路と沿道との一体的整備事業を推進する中で、公・民がコーディネーターとともに、将来のあるべきまちの姿や営みを考え、「夢」を創り、育んでいくことが必要である。
 当センターとしては、第二京阪道路や寝屋川大東線、大和川線等、地域に及ぼす影響が高く、まちづくりにつながる幹線道路の整備に際しては、本稿で述べた考え方を基本に据え、次世代に誇れる沿道まちづくりの実現に向けて、積極的に検討を進めていくこととしたい。

<参考文献>
1)国土交通省近畿地方整備局浪速国道
  工事事務所:平成13年度・平成14年度
  「緑立つ道」大阪府域沿道まちづくり
  検討業務報告書,  2002.3,2003.3
2)寝屋川市:平成13年度・平成14年度
  第二京阪道路沿道地区の計画的まち
  づくり検討業務報告書,2002.3,2003.3
3)(社)日本都市計画学会関西支部:
  関西都市計画100年の歩みとまちづ
  くりの知恵,(11)環境と沿道土地利
  用に配慮した道路整備,藤田健二著、
  P76〜P77,       2001.10

 

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