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ふるさとの顔づくりモデル土地区画整理事業 枚方津田地区 大阪府住宅供給公社 岡本 定雄 |
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枚方市津田地区は、自然環境との調和、人にやさしい安全な居住環境づくりを考えて、区画整理されている地区です。 今回の特集は、この地区の概要、取り組みにスポットをあて、どのようにして個性的で魅力ある街に生まれ変わったのかを取りあげます。 1.津田地区の概要 枚方市は古くから人が住みつき、淀川の流れとともに栄えてきました。「ひらかた」の地名がはじめて文献にみえたのは日本書記であります。平安時代には、枚方台地は交野ケ原と呼ばれ貴族の遊猟地として、また桜の名所として広く知られていました。江戸時代の枚方は、京街道の宿場として、また大阪天満と京都伏見を結ぶ淀川舟運の中継港として、水陸両面の交通の要衝地として栄えてきました。近代になると明治43年の京阪電車の開通で郊外住宅地としての可能性が開け、昭和22年の市制後、大規模な住宅団地が建設され、大阪近郊の住宅地として、市域特性を生かした内陸産業団地開発や民間企業の進出とともに北河内地域の中心的都市として発展してきました。 枚方市においては、人口集中地区は西(中心市街地)から東へと拡大しつつあります。本地区が位置する枚方市の東部地域は、枝状に延びた市街化区域の東端部に残された空閑地にありJR学研都市線の複線化という好条件も加わって、市街化のポテンシャルの高い地域であります。このような状況のもとで、枚方市東部地区整備の核として位置付けられる本事業は「良好な住宅・宅地の供給」というに留まらず広域幹線道路や近隣公園などの市東部地域の都市基盤となる「公共施設の整備改善」あるいは、市東部地域の「居住環境整備の先導」という広域的な役割をも担っています。 また、本地区は、周辺の山並みの緑、伝統的な家並み、地区周辺にまつわる史実など景観性、歴史性豊かな立地にあるとともに、関西文化学術研究都市の研究開発拠点の一つである「津田サイエンスヒルズ」とともに「津田地区」を形成しており、学研都市の「住宅ゾーン」として新しい枚方のまちづくりの一端を担う重要な地区であります。 |
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2.まちづくりの全体方針 本地区のまちづくりの全体方針については以下のとおり掲げ、まちづくりを行っています。 1.居住水準の向上として ・美しさとうるおいのある景観づくり ・地域を誘導するモデル的景観づくり ・住民の参加による居住水準の向上・維持 ・人にやさしい安全な居住環境づくり 2.新しいふるさとづくりとして ・丘のまちの特性を活かした景観づくり ・地域固有の街並み構造の参照 ・定住できるまちの形成 ・学研都市として新しい地区イメージの形成 3.周辺環境とのなじみとして ・見上げられる景観、見下ろされる景観への配慮 ・既存の街並みや自然環境との調和 ・人と人とのコミュニケーションを醸成する場の形成 |
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3.事業の概要
4.地区全体イメージ 《緑豊かなふれあい・共生空間の創造》 …学研都市…逍遙の丘『津田くにみ坂』 全体景観については、地域の新しいランドマークを形づくり、建物グループごとの個性を全体的に纏まりを生み出し、見上げられる景観、見下ろされる景観の美しさ、山並みとの調和を形づくるものです。 5.顔づくり計画の概要 上位計画としての、「大阪府新総合計画」においては、「のびやかに憩い創造のエネルギーあふれる生活と産業の地域づくり」を目標とされています。また、「枚方市総合計画」においては、「緑と文化を育む、人と人とのふれあいあるまち・枚方」の将来像として、また、「関西文化学術研究都市(大阪府域)の建設に関する計画」においては、「周辺環境に配慮しつつアメニティ豊かな住環境の整備」を図ることとされています。 当地区においてこれらの上位計画に沿って枚方市の新しい「顔」として地域の特性を活かした個性的で魅力ある居住環境の実現を図ることとして、ふるさとの顔づくり・「まちづくり」の全体テーマを『緑豊かなふれあい・共生空間の創造…学研都市…逍遙の丘「津田くにみ坂」』と掲げ、まちづくりを推進しています。 本地区は4つの「街並みグループ」によって構成されており、「街並みグループ」同士をふるさとの『顔』として、或いは、地区と周辺地域とを結ぶ地区内主要幹線道路を「景観軸」として『地区の顔』と位置付け、顔づくりとして質の高い整備を行うものです。 ふるさとの顔となる街並み 街並みグループについては、それぞれがまとまりと個性のある景観・環境を形成するため、まちづくりの全体テーマのもとに各グループにも整備テーマを以下のように設定しています。 1.北側住宅ゾーン「うるおい」 〈緑豊かな住宅地によってうるおいのある街並みを形づくる〉 このゾーンは、低層集合住宅地によって地区外に対する良好なランドマークを形づくるとともに斜面地の特徴を活かした個性的な住宅を計画し、住宅の外構の緑を充実させたうるおいのあるゾーン景観をつくります。 2.南側住宅ゾーン「ゆとり」 〈道や広場を活かして、うるおいのある街並み、魅力あるコミュニティ空間をつくる〉 このゾーンは、歩行者専用道路を中心に、街区公園と集合住宅内の共用空間或いは、独立住宅地の区画道路を有機的に連係させ、みちの楽しさや屋外空間のゆとりのある住宅地を形成するものです。 3.中心ゾーン「つどい」 〈都市的雰囲気や界隈性が演出されたまちの中心ゾーンを形づくる〉 このゾーンは、街路の軸性を高めるため、住棟配置やデザインによってみちのシンボル性を高め、宅地外構と歩道とを一体的に計画し、つどいの楽しさを演出するような街並みをつくるものです。 4.公園・緑地ゾーン「ふれあい」 〈人と人、人と自然・歴史とのふれあいを育む緑の丘を形づくる〉 このゾーンは、近隣公園を中心に人々とのふれあい、自然とのふれあい、ふるさとの風景や歴史とのふれあいを日常的に楽しむゾーンとして計画するものです。 地区の顔となる景観軸 景観軸については、地区の主要アプローチ道路である「都市計画道路長尾津田線」、地区中央部を東西に貫き、津田サイエンスヒルズ(研究施設区域)へ至る「区画道路1号線」、地区を南北に結ぶ「歩行者専用道路」と地区内サ−ビス幹線の主要アプロ−チ道路となる「区画道路2・3号線」を地区の顔としての景観軸と位置づけ、それぞれの立地特性、機能に応じた空間形成を行い「顔」としてふさわしい魅力ある景観づくりを進めています。 1.山麓景観軸 都市計画道路長尾津田線は、地区への主要アプローチ道路であるとともに地区景観の前景を形づくる重要な空間であり、まちの第一印象を形づくる道路として、道路や沿道の緑化に表情のある沿道空間をつくり、既存集落側の街並みとの調和を図ります。 2.中央景観軸 区画道路1号線は、道に地区の中心施設が立地するメインストリートであり、津田サイエンスヒルズへのゲート空間ともなる道路であります。又、周辺地域から国見山へ至る歩行者動線となるため、道路・沿道が一体となった界隈性のある歩行空間を形成し、楽しい集いの場となるゆとりある空間を形成していきます。 3.歩行者景観軸 地区を南北につなぐ歩行者専用道路は、地区の生活主軸となる道路であるとともに市の自然巡回路のルートともなり、周辺地域をも含めたコミュニティ交流の場としての空間であり、緩やかな丘の形や見晴らしを道の個性として活かし、人々の集いや憩いの場を備えたうるおいのあるみちづくりを進めています。 4.サービス幹線景観軸 区画道路2号線および3号線は、南側住宅地の外周サービス道路であり、居住者にとって日常的な生活幹線であるとともに周辺地域から当地区を抜けて国見山へ至る自然巡回路のルートでもあります。よって、歩行者専用道路へのアプローチ空間として、親しみやすさやうるおいのある空間づくりとして、みちづくりを進めています。 景観軸のデザインテーマ 当地区はゆるやかな丘陵地であり、丘陵を照らす日の光、四季それぞれに表情を変える国見山、生駒山系の緑が生み出す豊かな風景や風情を持った土地であります。本計画は、津田の新しい顔となるみち(景観軸)を人々がこのような環境の中で出会い、自然を再発見し、あるいはまちの先進性を感じ取る場となるように計画しています。 景観軸のデザインテーマについては「光・丘のかたち・四季」として設定し、各景観軸の役割り、立地条件に応じて、道路の構成要素である舗装・街路灯・ストリートファニチャー・街路樹等をデザインテーマに沿って整備するものです。 景観軸の道路デザイン 幹線道路や歩行者の主動線となる道を街並み景観の骨格とし、又、コミュニティ交流の場として、まちづくりの全体テーマに基づき、顔づくりとなる景観軸にデザインテーマを設定し、各々質の高い整備を行っています。 1.都市計画道路長尾津田線
2.区画道路1号線
3.歩行者専用道路(1号〜4号・11号)
4..区画道路2号線・3号線
■おわりに 平成2年度に事業に着手して、9年が経過し、平成11年度換地処分を終え土地区画整理事業が終了しました。 昭和57年土地区画整理法の改正により、地方住宅供給公社に事業施行権能が付与されて当公社としては、当地区が第1号の土地区画整理事業でありました。 昭和63年土地区画整理事業調査の実施に始まり、土地区画整理事業での新たな事業展開への不安と期待の中で、事業を実施し、地元協議を重ね、事業計画の認可・仮換地の指定と造成工事が概成する中、「ふるさとの顔づくりモデル土地区画整理事業」と併せて、「街並み・まちづくり総合支援事業」を平成8年度及び、平成9年度に実施することにより、まちの「顔」にふさわしいより魅力的、総合的な都市空間の創造に向けたまちづくりを行ってきました。 事業計画の認可より9年に渡り、社会経済情勢の変化の中、宅地造成工事の完了のもとに、一つのまちの誕生までの時間経過が足早に過ぎ去り、事業着手時が昨日のように思われます。今、新しいまちが誕生し、生れ変わった当地区に新しい人が住まい、賑わうことに感慨深いものを感じます。 以上。 |
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