新しいまちへの「ガレリア(回廊)」
門真市石原東・幸福北地区の密集地区が花のあふれる街へと大変身しました
緑のガレリア
ガレリアー両側の展示ブースには
幼児の絵画を展示する予定
平成16年10月22日、大阪府門真市の一角で、盛大にまちびらきが行われました。明るい壁には花があふれ、新しい街の誕生です。
京阪電車「古川橋駅」北約400mに位置する「石原東・幸福北地区」と呼ばれる1ha弱の地区は、密集住宅市街地整備促進事業(現、住宅市街地総合整備事業。以下「密集事業」という)と安全市街地形成土地区画整理事業(現、都市再生区画整理事業)の合併施行により完成しました。古川橋駅周辺は、大阪のビジネス中心街である淀屋橋駅から約15分と利便性の高い場所であり、高度経済成長期(昭和30年代後半〜40年代)の大阪都心部の人口受け皿として急激に都市化、道路などの整備のなされないまま、文化住宅・長屋住宅が大量に建設され、現在は老朽化した木造密集住宅地区が拡がっています。門真市は、約461haを、密集事業地区として位置づけ、これまでも「末広南地区」(密集事業と土地区画整理事業による初の合併施行・当機関誌2号で紹介)などをはじめ、面整備事業を中心に地区の整備を進めています。
平成3年の地区内の権利者へのアンケートや勉強会から始まり、事業研究会を立ち上げ、組合に変更し事業完成まで、13年余にわたる長期事業でした。人が集まり、花と芸術のあふれる「ガレリア」を中心として、まちの再生を試みています。この事業の完成は「末広南地区」などの他地区とともに周辺地域の改善の大きな原動力となるでしょう。さらに密集地区全体がよりよいまちになっていくためには、「地域社会と共感できる街づくり」というコンセプトを広くかつ深く浸透させていくことが大切です。
円形広場からガレリアを望む門真市石原東・幸福北地区の整備にたずさわって
センターは、本組合設立以前から基礎調査・現況測量を行い、組合設立後、工事着手にむけて仮換地の指定、更に工事完了後の換地計画と換地処分・土地区画整理登記とに携わってきました。
当地区は建物が密集した地域で、現地において明確に土地の境界確定ができる状況にはなく、土地の境界問題と輻輳した権利関係の整理が必要不可欠でした。このため、事前に法務局、市等の関係資料を収集整理し、一筆測量を基本とした地積確定測量を、地権者と現地立会のもとに実施しました。
しかし、既成市街地は土地価格が高いことから、数pの差でもお互いに譲らないなど、境界確定が不調に終わるケースが数カ所ありました。特に従前から隣地境界問題に思いの強い地権者においては、数年に渡る不調を繰り返し長引きましたが、根気よく話し合いを重ねることにより、理解を得て、解決することができました。このように現地において、地権者と互いに納得できるまで話し合い、解決してきたことで、センターに対する信頼を徐々に得ることができました。
木造賃貸住宅では、家主と居住者との間で仮住居費及び建設資金の調達等の問題があり、家主の建替え意欲を削ぐ要因となっていましたが、「密集事業」と「区画整理事業」の合併施行により、密集事業による建て替え費用の軽減及び居住者の仮住居・転出者対策、安全市街地形成土地区画整理事業による道路・公園等の公共施設の整備と宅地の集約、共同化、防災機能を備えた建築物の整備が可能となりました。
換地設計については、建物計画にゆとりを持たせ、土地利用が有効に発揮できるよう考慮するとともに、照応の原則を踏まえた上で、地区全体のバランスを図りながら、点在する同一権利者及び同系列企業の土地を合併換地、また、独立した建物計画が困難な土地については数筆を集約し、建築敷地として適正な奥行きと間口を確保する換地設計を行いました。
最後に、本事業において、大阪府は補助金の確保、指導監督、市は補助金申請、転出者の公的住宅への斡旋、組合事務局は地権者に対する転出者対策、建設資金の調整、税制面等の問題対応、役割分担が明確化された中で、センターは調査設計業務とともに組合と行政間の調整、各認可手続き業務等のお手伝いする中で新たなことを学べ、意義深いものがありました。今後はこれらの知識と今日までに蓄積したノウハウを活かし、既成市街地における新たな「まちづくり」に取り組んでまいります。
都市整備事業部 区画整理課
石原東・幸福北地区土地利用計画
事業概要
事業名門真市石原東・幸福北地区密集住宅市街地総合整備事業
門真市石原東・幸福北土地区画整理事業 事業主体門真市
組合 施行面積1.08ha
0.84ha 施行期間平成7年度〜平成16年度
平成10年度〜平成16年度 総事業費1,791百万
953百万 事業内容・調査(建物調査委託)
・老朽住宅等除却(老朽住宅買収費23棟143戸)
・建物補償(12棟42戸)
・道路整備(区画道路築造工事)
・緑地整備(緑地公園整備工事485.18m2)
・公共施設設計(公園、道路、下水道、水路)
・建築設計費(基本設計費7棟、建築設計費7棟)
・共同施設整備費(共同施設整備費7棟) 事業年表
平成3年度権利者へのアンケート調査、勉強会 平成6年度門真市石原東幸福北地区共同整備事業研究会発足 平成7年度門真市石原東幸福北地区共同整備事業組合設立 平成10年度門真市石原東幸福北土地区画整理組合設立 幸福北地区移転補償及び老朽住宅除却 平成11年度石原東地区移転補償及び老朽住宅除却 平成12年度幸福北地区公共施設築造工事 石原東地区建物基本計画及び仮換地指定 幸福北地区建物実設計 平成13年度区域拡大による事業計画の変更 平成14年度建替促進事業(共同、協調)2棟22戸 公共施設(道路、下水道)工事 平成15年度建替促進事業(協調)5棟51戸 公共施設(道路、下水道、水路、公園)工事 平成16年度換地処分 門真市石原東幸福北地区まちびらき 土地区画整理組合解散
密集事業
区画整理事業
密集・区画整理事業
ベランダには花があふれる 従前 石原町文化住宅 従前 幸福町文化住宅 Cタイプ ルーフテラス
新しいまちへの「ガレリア(回廊)」
門真市石原東・幸福北地区の密集地区が花のあふれる街へと大変身しました
合併施行に取り組んで
門真市における密集事業 門真市都市整備部地域整備課長
渡辺敏幸氏
門真市が昭和59年度の密集事業の大臣承認以降取組んできた既成市街地の面的整備の完成地区は「石原東・幸福北地区」で4地区目となりました。
1地区目の「朝日町地区(平成2年度完成)」では約7,400uを密集事業の単独手法(交換分合)で整備し、課題に直面しました。その後、全国で初めて密集事業と街区高度利用土地区画整理事業の合併施行を「末広南地区」(平成12年9月に「まちびらき」※本誌2号に掲載)で行いました。当時は初めてのケースであり、着手までには相当の期間を要しましたが、現在では、合併施行そのものが認知され、国も推進しています。密集事業と区画整理事業は共に基盤を整備する事業手法であり、密集事業は基盤整備後に建物への間接補助がありますが、合併施行では両手法の基盤整備における仕切り方がポイントになります。
特に既成市街地における事業実施において事業費が最もかかるのは「区画整理事業での移転補償」と「密集事業での買収除却費」です。461haという広域な過密住宅地区を抱える本市では、いかに事業費を抑えて魅力あるまちを再生していくかが課題であり、「門真方式」という考え方で面的な整備地区に取組んでいます。
@単独整備手法の場合も合併施行の場合にも密集事業での任意の組合を設立し、市と組合間で「まちづくり事業協定」を締結し、費用分担、役割分担等を明確にして事業の推進を図っています。
A地区内で資産活用を行う権利者(木造賃貸住宅経営者)には、更地になるまでの費用(借家人の退去に伴う費用+除却費用)のみ補助しています。
平成15年度から密集事業での買収除却費等補助金については、既成市街地での合併施行等も視野に入れた考え方で市の負担が軽減される措置等を講じています。「末広南地区」では、住宅部分のない建物(倉庫、店舗、事務所等)は区画整理事業での移転補償対応としました。「石原東・幸福北地区」では、密集事業での整備の方法が変わったこと、また、区画整理事業での補助の限度額等の問題や、密集事業での先行着手などの要因などにより両手法の仕切りは「末広南地区」のように明確にはなりませんでした。
事業協定の役割分担の中で、借家人の方の生活再建については、組合事務局は代替え住宅、市は公営住宅等の斡旋をおこなっています。
石原町 東広場既成市街地の再整備は、公共・民間どちらが欠けても不可能で、まちづくり意識を共通のものとし、お互いの弱点を補完することにより可能となります。
「石原東・幸福北地区」の完成は権利者各位のまちづくりに対するご理解・ご協力の賜物であり、また組合事務局のご努力、大阪府、都市整備推進センターのご支援、ご指導により「花と芸術のあふれるまちーガレリア」として全国に誇れるまちに生まれ変わることができましたことを、この紙上をおかりしてお礼を申し上げます。
石原東・幸福北地区
まちびらきに至るまで 門真市石原東・幸福北土地区画整理組合
門真市石原東・幸福北地区共同整備事業組合
理事長 高橋光壽氏
19世紀フランスの鉄面を施した
花のあふれるエントランス
天然温泉付きの浴室はじめに
昭和54年に京阪電鉄「古川橋駅」南側の街づくり事業に携わって以来、新たな街の創造に尽力して参り本地区の完成をもって5地区(約26ha)となりました。時代の流れもあり街づくりは、新市街地型から既成市街地再生型へと移行し、門真市においての密集地区再生事業ニーズは、3地区目となる本地区の完成を待たず、次の施行予定区域が決定する勢いで高まっております。
本地区の特色
既成市街地の再生は、区域面積が狭小でも権利が輻輳しているため利害関係者の数が非常に多く、事業の理解を得るまでのプロセスに時間を要し、その地区の特性にあう整備手法の構築がはなはだ困難であると実感しております。しかしながら先に完成した「末広南地区」で、門真市のご指導により官民一体となり互いの役割分担を明確化し事業を進捗させる仕組みが構築された事により、事業のハードに対する不安はなくなりました。本地区では「地域社会と共感できる街づくり」を目指したことが大きな課題となりました。
地域社会と共感できる街づくり
本地区の総合コンセプトを『花と芸術のあふれる街−ガレリア−』と決定し、街並み景観を統一しました。建物の外壁には19世紀フランスの鉄面を施し、区域内に路地・街のモニュメントと幼児の絵画等の展示ブースを設置する小広場をつくるために、権利者に約3mから5mの壁面後退をいただきスペースを無償で提供していただきました。また近年、問題となっている防犯対策として地域セキュリティーを導入し、再生建物には公衆浴場を営まれていた権利者が街づくりを契機に掘削された天然温泉を引き込み、温泉付の賃貸マンション(各専用住戸に配湯)として住民へ提供、高齢者の方にはデイサービスをテナントとして迎え、街づくり事業によりいただいた恩恵を地域に還元する計画を立案しました。これは誇るべき歴史と文化に恵まれない地元門真を心より憂い、愛する権利者が一丸となり更なる地域社会の繁栄を切望した結果であると感謝致しております。そして最後に地域の皆様と共感できるものとして「花」のあふれる街を想定致しました。常に花が街にあふれ続ける状況をどう構築していくか事務局に課題として与え、希薄になった家主・入居者とのコミュニケーション、周辺住民に対する街づくりへの参加意識を啓発するため家主・入居者の等分負担で権利者の再生建物のベランダに花を飾り続ける提案を致しました。
完成した街が本当に地域社会と共感出来るかどうかは、今からが肝心であり継続的な仕掛けが必要です。温泉配湯事業・幼児の絵画展示・地域セキュリティー等引き続き管理を要することになります。そして何より街中に美しい花が咲き、地域を飾り続けるためには相当な労力がかかることとなるでしょう。しかし、今回敢えて決意した「地域社会と共感できる街」として必ずやこの街を育て上げたい。そして街を育てる人々を育くみ、地域を憂う人々の輪がどんどん拡がってほしいと心から願っております。最後になりましたが本事業が新たに全国に発信できる街として無事竣行させて頂きましたことは、国・府・市のご支援・ご指導の賜物であり、また権利者と一丸となりお力添えを頂いた大阪府都市整備推進センターに深く感謝を申し上げたいと存じます。