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民間自力更新の適切な誘導について
(財)大阪府都市整備推進センター都市整備事業部主幹  中西義和
まちづくり事業部専門役  長谷和浩
規制誘導制度の提案

 密集市街地の改善においては、重点地区の面的整備や、緊急車の接近できる防災道路とその沿道の整備とともに、民間による自力更新の適切な誘導が必要です。しかし現状における民間自力更新は、敷地面積や道路条件等により、建替え後に現状床面積が確保できない理由により進みにくいことや、建替えによる不燃化が必ずしも図られていないことなどの問題点があります。不燃化については、準防火地域指定を行うことにより、かなり促進されると考えられますが、現時点では、大阪府内では大阪市を除くほとんどの地域で指定されていません。
 そこで当センターでは、建替えメリット(従前と同等以上の建築面積・延べ床面積の確保)のある民間自力更新条件を整備し、建替えと不燃化を促進することが、密集市街地を良好なまちへと誘導する上での重要な一つの手段と位置づけ、下記のとおり規制誘導制度について提案を行います。

密集市街地の動向と対策の視点
1)密集市街地での新築(建替)動向では、木造の戸建住宅が増加しています。これは、地域全体として燃えやすい市街地の改善には繋がっていないことを意味します。
2)また、密集市街地は狭小な敷地が多く、前面道路も狭いことから、建替時には道路拡幅(2項道路等)に伴う敷地後退等により、現行法規制内では、従前床面積の確保または拡大が困難な場合が多く、なかなか建替えに至らない場合が多いと考えられます。
3)これらのことから、「燃えにくい構造の建物とすること」を前提に、「建ぺい率の緩和」、「容積率緩和」、「斜線制限緩和」などをセットで適用することにより、建替メリットを確保することが有効と考えられます。
4)また、面的な事業手法のように、一度に建替えるものと異なりますので、順次の段階的な建替えによる「改善の積み重ね」から、地域全体の安全性が向上する仕組みが必要です。
※現行の規制誘導制度が活用されていない原因の一つとして、こういった密集市街地の特性等に制度内容が適合していないことが上げられます。
 本論では、現行の規制誘導手法をベースにしつつ、密集住宅市街地整備に有効に活用できるように、 I.街並み誘導型地区計画とセットにした角地適用型建ぺい率緩和制度と、II.段階建替対応型連担建築物設計制度の二つの新たな制度提案を行います。

規制誘導制度フロー

 

新たな提案制度の適用効果の高い地区
 これまで、密集事業整備計画区域の中で、事業対応されず現行法規制だけに委ねられてきた地区について、提案制度を活用することにより、広範な密集市街地エリア全体としての安全性や住環境改善を図ることが、この提案制度の狙いです。特に図1のA、B、Cのような防災道路の沿道や、一定の生活道路網があるものの、その幅員が不足あるいは一部の敷地が基準法上道路でない路地である等の地区が、提案制度活用に有効な地区となります。

提案制度活用

新たな提案制度
I.街並み誘導型地区計画とセットに した角地適用型建ぺい率緩和制度
1)街区単位を1敷地と見なす等により、角地適用の柔軟な解釈を行います(建築基準法施行細則の改定が必要)。
2)街区単位での角地適用は、一般建築行政とは違う特例措置となることから、一定の住環境性能の確保が担保された地区や、まちづくりが行われている地区など、特定の条件を備えた地区に限定した運用が必要ですので、街並み誘導型地区計画との併用を行います。
3)街並み誘導型地区計画との併用により、容積率緩和や斜線制限緩和+上記の建ぺい率緩和が可能となるので、住宅の建替メリットを生み出す条件が成立します
4)建ぺい率緩和により、敷地内空地が一般の建替よりも少なくなるので、隣地間及び地域の防災性(安全性)を担保するため耐火建築物又は準耐火建築物であることを条件に、建ぺい率緩和を行います。
5)なお、前面道路からの壁面の位置の制限を前提として、角地適用型建ぺい率緩和制度の適用を考えていることから、地区計画区域内の壁面制限についての合意形成が困難な場合は、建築基準法の壁面線指定により担保する等の措置が必要となります。この場合、合意形成のなされた複数の敷地から順次指定するなどの柔軟な運用が望まれます。

角地適用型建ぺい率緩和制度

適用地区と活用効果

防災道路(主要生活道路)整備促進と、沿道における延焼遮断帯形成の活用効果
【A地区】
 防災道路を拡幅整備する場合、沿道の狭小敷地が道路後退により更に狭小となり、現行法規制内の建替えでは、従前床面積を確保することが困難な場合が多くあります。
 『街並み誘導型地区計画+角地適用型建ぺい率緩和制度』の活用により、防災道路の整備とともに、従前床面積の確保もしくは拡大による住宅等の再建が可能となります。

(2項道路等で)街区構成している地域等における、自力更新条件整備の活用効果
【B地区】
 敷地が狭小で前面道路4m未満の戸建て、長屋(持家)が密集した地区においては、道路後退による敷地面積減少と、建ぺい率・容積率・道路斜線の制限から、建替後に従前床面積の確保が困難となります。
 『街並み誘導型地区計画+角地適用型建ぺい率緩和制度』の活用により、生活道路の整備とともに、従前床面積の確保もしくは拡大による住宅等の再建が可能となります。


II.段階建替対応型連担建築物設計制度
1)段階建替完了時のこの制度の適用区域全体(認定区域)の合法性(建ぺい率・容積率等)を担保できる方法(認定基準)により、当初や、途中段階での建ぺい率等の状況を柔軟に解釈します。
2)認定区域内の個々の仮想敷地(通路を含む個々の敷地)における形態、建ぺい率、容積率、構造、外壁の後退距離等を規定することにより、段階建替を可能とします(段階建替完了時の認定区域全体の合法性を、この条件設定で担保)。
3)個々の敷地における建ぺい率と容積率の算定上の敷地面積に、通路部分の面積を含みます。
4)通路の敷地面積カウントにより、一般規制の建築面積、延べ床面積よりも拡大できるので不燃化による安全性を確保するために、耐火建築物、又は準耐火建築物を要件とします。
5)適用地区における現況幅員の把握を行い、認定基準を検討します。
段階的に建替えるために、途中段階での安全性の確保が重要です。たとえば通路、路地の現況幅員が極端に狭い、行き止まりの延長が極端に長い等の場合は、問題があります。一方、現況幅員等の規定が厳しすぎると、適用対象地区が極端に限定され効果的な制度にはなりません。そのため地域毎の通路等の実状と、途中段階での安全性確保との整合性の検討が必要です。

適用地区と活用効果
通路で構成されている地区等における、自力更新条件整備の活用効果
【C地区】
 通路で構成されている地区の場合、建替不可能な敷地が存在する場合が多くあります。
 『段階建替対応型連担建築物設計制度』の活用により、従前床面積の確保もしくは拡大による住宅等の再建が可能となります。
 当センターでは、改正建築基準法の活用なども視野に入れ、今後も引き続き規制誘導手法について、検討を行います。

段階建替対応型連担建築物設計制度
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