巻頭言  
大阪の都市再生を通しての新しい展開
都市づくりと当センターの目指すもの ―

(財)大阪府都市整備推進センター 理事長 藤田 健二

(財)大阪府都市整備推進センター 理事長 藤田 健二 「都市の再生は、日本活性化の救世主」との、新しい期待が高まるが、未だ力強い動きは感じられない。他方で、「国主導」から「都市先導」への、確実な時代の大転換を実感する。大阪の将来を規定する、都市づくりの行方とその舵取りが、今大きく問われている。
 当センターも、大阪府の都市行政を補完・支援する中で、土地区画整理事業や密集市街地の再編整備、府内の駐車場整備など、幅広く事業のコーディネートや計画、事業推進に携わり、都市づくりを担ってきた。また、昨年来、運営の基本方針として、@意識と組織の改革を軸とする経営基盤の安定、A都市づくりの「知恵袋」としての機能強化、Bコーディネーター業務を含む、公・民事業の推進に向けた強力な支援、を掲げ、地方自治体や民間事業者、NPO等との連携を強め、自立的で効果的な業務推進を目指している。
 今後は、いま求められる新しい社会資本整備の内容と方向を見定め、「都市の再生」、とりわけ既成市街地の再生(以下、ソフト面を含めて既成市街地を「街なか」と呼ぶ)の中に、それらを具体に組み込み、当センターの基本方向の主柱とすることが重要と考える。
 以下では、大阪の「街なか」再生を中心に若干の私見を述べる。
 膨張時代の終焉
 外から内への意識改革と魅力ある街そだて
 大阪の都市膨張が一定収まった今、「都会生活」へのニーズが、益々増大している。
 そのため、生活者視点から新たに「職と住」の関係を見据え、外でなく内へも目を向けた「街なか再生の方策」は重要である。その中では、「安全・安心」、「自然・都市環境」、「活力」、「暮らしやすさ」の課題に加え、熾烈な都市間競争の中で「都市の景観や美しさと品格」が問われる。これらは、都市内部からの意識改革と魅力づくりが基本となる。

 ものから人へ

 コミュニティと心理的中心
 これまでの都市づくりは、経済と効率(機能)に支配された。都市基盤整備や土地利用は、地域の生活や地味・風土との繋がりよりも、施設毎の足し算で、都市づくりが可能だとして取り組まれた。今、「都市は、楽しく住み、働き、訪れるに値する処か」が問われ、都市のシンボルや心理的中心が強く求められている。都市魅力の源泉は、異種多様な人であり、安全・安心で活力あるコミュニティの存在である。特に、「街なか」でのそれらは、永年の地域住民の生活・行動様式や企業活動等の積み重ねの結果である。ものづくりの「物理的技術」を超え、歴史、文化、伝統を踏まえた「心理的中心」を、都市の真ん中に創り上げる「社会的技術」の視点と、アプローチの重要性を忘れてはならない。
 新しい生活・産業空間づくりと人の呼び戻し
 府域での地域核の形成
 大阪は陸・海・空の広域交通網整備を全国に先駆け、それを発展のバネとして存立基盤を固めた。新たな都市生活や雇用の場を生み出し、府域の特性を発揮するには、大阪市中心の都市構造から、経済・社会・文化面で一定自立した地域構造への変革が急務である。それには、1)環状交通軸(現・大阪中央環状線ルート等)と大阪特有のストックたる多数の放射交通軸(鉄道各沿線、放射幹線道路)との更なる連結・強化を図り、2)それら結節点でのポテンシャルを活かし、地域核の形成と周辺の密集市街地の再編とを強力に結合して、豊かな生活圏と新しい産業空間を再構築すること、特に、3)当該地域内の各種の低未利用地を、都市再生の新資源に変えうる法制度・手法等の創設や改変を迅速に行い、総合施策の一環に組み込むことは有効である。
 制度や仕組みの「すき間」への挑戦
 府の都市政策の転換
 成長期の大阪では、土地区画整理事業や道路等の基盤整備は、「予防型の都市政策」として主に周辺・新市街地で先行された。「街なか」では、駅前再開発が主で、本格的な密集市街地再編・整備の経験は少ない。一方で、阪神淡路大震災の被災教訓は、街なかでの「治療型の都市政策」の重要性を強く訴えている。
 「街なか」再生は、地域や地区の具体的課題に住民や地元行政等が、「コーディネーター」と連携・模索して取り組むもので、治療的側面を多く含み、かつ、生活の多面性から総合的で迅速な対応が求められる。しかしながら、現行の事業制度は、その殆どが、強制力の無い「任意事業」としての国の縦割り補助制度であるため、画一的で迅速性に乏しく、また、制度同士も不連続で、都市づくりに多くの「すき間」が生じている。
 財源や制度の壁の除去と共に、地籍や諸権利の紛争を含む隘路打開のためには、「法的強制力」の付与や、迅速化の面からの「紛争処理裁判所」的な枠組みや制度の新設も緊要である。
 今、地方分権推進の中で、地方の自主財源の強化と早期移譲、補助金でなく総合的な助成制度の整備や地方交付金制度の廃止が謳われている。府は、先に過渡的制度として国に「都市再生包括交付金制度」を提唱した。今こそ地方は、都市再生の独自理念を持ち、総合的な制度や仕組みを創出・建議し、既存の制度・手法の「すき間」を積極的に埋め、自ら望む豊かな都市像の実現を目指して挑むべき時である。国も国民の目線に立ち、真の国土経営や国益を考慮して省庁間の垣根を越え、都市間のフェアな競争の「場づくり」と「すき間」を埋める役割を果たすと共に、公・民への幅広で強力な支援を行うことが求められる。 
以上、大阪の今後の都市再生、特に、「街なか」の再構築に向けた私見を述べた。
 これらは正に当センターの今後の目指す方向でもある。力強い大阪の明日に向け、職員一丸となり日々研鑽に努め、本府の行政・政策を補完・支援し、その一部を代行できるセンターとなるべく全力を傾注してまいりたい。
 今後とも、関係各位の温かいご理解とご支援を、心からお願いする次第です。
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