ニューヨーク5番街の、有名ランドの店のクリスマス飾り。 個性や高貴さで街の商戦の質を盛り上げている。人はそれを見て、5番街の世界性との一会を楽しむ。 パリは高貴さで世界のどの都市にも負けないが、その魅力の奥には、深い大衆性がある。 雨の朝、昨夜のゴミを街から吸い取る移動掃除機は、職人技術で動き、街の人がそれと応対する。この一会の面白さ。 プロバンスの夏は美しい。エクス・アン・プロバンスの町での一会は、ルネサンス教会前広場での近在の村人の本当の結婚式であった。 花嫁が中心にいて、新郎は左端に舞っている。正面の人々はその家族。町と村はつながっている。

都市と人の一会はいたる所に機会があって、所さまざま人さまざまである。
しかしこの一会が都市の持つ気風や都市と人との一期のアメニティを演出する役割も担っている。それはいったい何が創り出すのか 、これに答えることは難しい。ひとつ言えることは、その都市の活動そのもの、市民の生活そのものから来る所が大きくて、 それを感じる人には感じられ、感じない人には何事もないといった性格のものである。その幾つかを紹介してみよう。 ただしそれは私にはそう見えそう感じられたと言うにすぎないものではある。
　初めの例はニューヨーク、自爆テロの前の話しである。
　クリスマス商戦の真っ盛りにこの都市にいて私自身も買い物を楽しもうと5番街に出た。 この街のクリスマスのシンボルは言うまでもなくロックフエラーセンターの広場の大きな樅の木である。 これを頂点にして5番街全体に人があふれ、その人だかりの中心にはなにかの一会がある。そこでさる世界ブランドの店の飾りつけに 出会った。ビル全体をクリスマスプレゼントの箱にみ立ててリボンをかけた風の美しい個性的な演出である。 その高貴さと楽しさが5番街の世界性を人々に伝え、この街のクリスマス商戦の性格を盛り上げている。 これはどこにでもあるものではない唯一のもの。人はそれに魅せられ集まって来るのだ。さすがである。
　一方でパリ。下町の住み心地の良いホテルに泊りこんでいた。朝食の雰囲気を変えようとまだ人の集まる前のカフェの席に 場所を取った。少し雨で少々さびしい。しかし落ち着いて朝食が摂れる。パリは高貴さでは世界のどの都市にも負けないが、 実はもうひとつの魅力を持っている。それは大衆性である。あたし達、おれ達が街をやっていっているという気分がそこら中に ころがっている面白さ、共感のアメニティである。お前にだってそうだろと彼らは思っている。 昨夜までのゴミを一掃する運転手つきの移動掃除機がやってきた。運転手の技能が発揮される。街中から声がかかる。 この店の男もそれで家の中を掃除させた。
　プロバンス地方の夏エクス・アン・プロバンスでは、近在の村人の本当の結婚式を見た。教会前の踊りでしめくくられる。 街と村の強いきずな。これもまた一会であった。
　われわれの街は人々にどんな一会を提供しているのだろう。それが心配である。